8月 春菊
冬の鍋物用シュンギクはこれからがまきどき
板木技術士事務所 板木利隆
冬の鍋物に欠かせないシュンギクですが、天ぷらやおひたしにも向き、近年は生のままサラダやトッピングにと、幅広く用いられるようになりました。
いずれも取りたての新鮮さが魅力。栽培もしやすいので家庭菜園の野菜としてはうってつけです。
地中海沿岸地方の原産、日本へは中国を経て室町時代に渡来し、江戸時代から栽培が盛んになりました。春に黄色い花をにぎやかに咲かせるので「春菊」の名が付けられました。地域によっては「菊菜」と呼ばれることもあります。
まきどきは9月。種の準備をしましょう。
葉の切れ込み具合によって、大葉種、中葉種、小葉種に分かれますが、現在主に流通しているのは切れ込みが目立つ中葉種です。
切れ込みが浅く大型の葉の大葉種は葉肉が厚くて柔らか、香りが強いです。この他に、茎が太くて長く伸びヤシの木のような草姿となり、癖の少ないスティックシュンギクがあります。サラダや天ぷらにしておいしいです。
土壌に対する適応性はかなり高い方ですが、乾燥には弱いので、保水力のある畑を選びましょう。
生育適温は15〜20度ですので、低温期に良品を得るには、フィルムやべた掛け資材により保温します。
種まきに際しては、シュンギクの種子は充実度にばらつきがあり、もともと発芽率が低い性質があるので、やや厚まきにし、芽が多く出たところを間引きして生育をそろえるようにしましょう。種子は好光性で、覆土が厚いと発芽しにくいですから、覆土はやや薄めにし、覆土が厚い部分は芽が出たら間引きます。間引きは本葉2枚の頃2〜3cm間隔に、本葉7〜8枚の頃5〜6cm間隔を目安とします。間引き後は畝間に追肥し、軽く耕し込んでおきます。
収穫は、株ごと抜き取る方法と、本葉10枚ぐらいになったら下の方の葉を3〜4枚残して中心の茎を摘み取る方法があります。摘み取りの場合は、中葉種の中でも茎が伸びやすい新種を用い、最終株間を10cmぐらいに広く取り、多くの良い側枝を出させるために図のように摘み取ります。
※関東南部以西の平たん地を基準に記事を作成しています。
8月 な花
晩秋から春まで取れ、楽に栽培できるナバナ
板木技術士事務所 板木利隆
陽春のころにぎやかに咲き乱れる菜の花よりもひと足早く、大きく膨らんだつぼみを持つナバナが店頭に並びます。花蕾(からい)と若い茎葉を共に食べる野菜です。
近年は早生、晩生、多分枝性、耐病性(根こぶ病など)の品種改良が進み、晩秋から春先にかけて、長い間独特の苦味と軟らかな食感を味わえるようになりました。
土壌への適応性は広く、重粘土から砂質土まで栽培でき、育て方はやさしいのですが、冬中収穫するのですから、できるだけ日当たりの良い場所を選んでください。
種まきの適期は8月下旬〜9月下旬までと幅広いですが、早まきは早生種を用いて晩秋からの収穫を狙い、9月に入ってからの種まきは耐寒性が強く、分枝力の優れた品種を用いて、長期にわたる良質品の収穫を楽しむようにしましょう。
畑は早めに苦土石灰を全面にまき、よく耕やしておき、植え付け前に元肥として完熟堆肥と油かす、化成肥料を全面に施し、15cmほどの深さによく耕し込んでおきます。
種まきは図のように128穴のセルトレイに、1穴当たり3〜4粒まきとし、育つにつれて間引き1本立てとし、本葉4〜5枚の苗に仕上げて畑に植え出します。苗作りが面倒なら畑にくわ幅のまき溝を作り、3〜4cm間隔にじかまきして育ててもよいです。いずれにしても条間40〜50cm、株間25〜30cmぐらいの粗植とし、分枝を多く出させるよう心掛けます。
追肥は草丈が20cmほどに伸びたころから収穫期にかけて、生育の様子を見ながら15〜20日ごとに行い、次々と良い脇芽が伸び大きな花蕾が収穫できるよう心掛けます。
収穫は花蕾が大きく膨らみ、開花直前になったころに行います。全体の長さは10〜12cmほどが最適です。短く切り過ぎると後から発生する花蕾数は多くなりますが、細くなりやすく、逆に長く切り過ぎると後から出てくる側花蕾数が少なくなり収穫量は減ってしまいます。
生育中にアブラムシやコナガなど害虫が発生しやすいので、早めに薬剤散布して防ぎます。育苗中や生育前期の草丈が低い場合には防虫ネットやべた掛け資材の被覆も有効です。
※関東南部以西の平たん地を基準に記事を作成しています。