ハウスみかん
11月・12月のハウスみかんの基本管理を掲載しています。
いよいよ加温スタートです。加温前後の管理を怠りなく行い、充実した花を咲かせましょう。
加温開始の決定
加温開始日は以下の判断材料を総合的に考慮して決定します。着花安定を最優先に考え、不安材料があれば加温を遅らせる決断が必要です。
せん定後日数の目安
目安は、10月下旬~11月加温で130~140日、12月加温で120~130日です。その他の条件として、夏芽型で夏芽緑化後90日以上、春芽型では収穫終了後90日以上経過していることが必要です。
樹の状態
樹の状態は、①葉色がややあせ脱色し結果母枝が充実、②根の伸長が停止、③夏芽発生後の日照量、土壌乾燥、低温遭遇時間が充分、などが良い条件です。
切り枝水挿し調査による花芽確認
着花状況は、3~4日間隔で結果母枝を10本程度採取し、水挿しして確認します。加温開始の目安は、結果母枝の50%以上で先端に着花が確認できるようになった時です。着花率が高くなりすぎると着花過多の恐れがでてきますので、こまめな調査で着花状況を確認する必要があります。
硝酸態窒素濃度による判断
芽挿し調査の補助的な調査と位置付け、1週間毎に実施します。11月中旬以降加温の硝酸態窒素濃度の目安は5ppm以下です。
加温基準
9月号28頁を参照のうえ、以下の点を再度確認、実施して下さい。
①暖房機の点検(ノズル交換)、②ダクトの配置及び変更(生育差の解消)、③換気扇の動作確認、④サーモスタットの位置確認、⑤サイドビニル、妻部の多層被覆、⑥天井、二重および三重カーテンビニルの被覆、⑦隙間(谷部、谷柱部、吸気口内側)の目張り
基肥施用
加温7日前頃に、年間施肥量の5割の基肥を施用します。
発芽・着花促進
加温3日前より加温前までに30mm以上のかん水を行います。加温後のハウス内を温度が高く湿度も高い「蒸し込み」状態にするためです。
また、加温直後の夕方にビーエー液剤を散布し、腋芽の休眠を打破して発芽を促進させます。剤は移行性がないため、発芽させたい枝にはムラなく散布して下さい。
加温
※第1図参照
加温開始温度
樹勢が良ければ昼温25℃、夜温20℃で加温をスタートします。なお、開始温度は樹勢や外気温を考慮して設定しましょう。樹勢が弱い、加温前の落葉が多い、冷え込みが厳しい、あるいは春芽型などでは昼夜温とも2℃程度下げてスタートしましょう。
発芽・発蕾までの温度管理
発芽を揃えるため、できるだけ早く昇温します。昇温は夜温を1日1℃、昼温を1日0.5~1℃で行います。夜温を20℃まで上げても葉焼け等の影響がなければ、昇温ペースを1日1℃~2℃に上げ、昼温28~30℃、夜温24℃まで昇温します。発芽日数の目安は加温7日後程度です。樹上部の母枝先端2~3芽より発蕾(ボールペンの先端くらい)を確認できたら直ちに降温を開始します。高温期間が長いと生育が急ぎすぎます。加温後10日目の温度が高すぎるとじょうのう数が少なく、浮皮果が多くなる可能性があります。
発芽から開花までの温度管理
発芽後の降温ペースは、発芽揃いが良ければ昼夜温とも夜温20℃までは1日2℃ずつ、20℃以降は1℃ずつ行います。発芽のバラツキが目立つ場合は昼25℃、夜温20℃まで1日0.5℃ずつ下げて他の発芽を待ちます。昼温22~23℃、夜温17℃まで降温したら、開花期までそのまま昼夜温を維持します。生育が急ぎそうな場合は昼温を下げて調整します。天候不良時は、反対に昼夜温を1~2℃上げ生育を促進させます。花の充実を図るため、加温から満開までの日数は35~40日が必要です。
水管理
定期的なかん水を行い、適度な湿度を保ちます。花の走りが見られた頃から、灰色カビ病対策のためかん水量を減らしますが、開花期に過乾燥にならないように注意します。
結実管理
着花量が多い場合
摘蕾を行うとともに、満開前に花肥を施用し花疲れを防ぎます。
着花量が少ない場合
花の充実を良くするため、開花までの期間を十分とるとともに、かぶさり枝の除去や芽かきを行い結実促進を図ります。
病害虫防除
青果率向上のため、ハダニの防除を加温前後に行いましょう。農薬は地域の防除基準を参考に選択し、農薬安全使用基準を遵守して使用して下さい。
※第1図につきましては、<福岡の果樹11月号>をご覧ください。