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1月・2月のナシの管理作業について 《Kaju 福岡の果樹 No.560 》
平成28年産ナシの生育状況
はじめに平成28年産ナシの生育状況を振り返ると、1月下旬に低温に遭遇し凍害等が懸念されました。3月以降は平均気温が高く推移し発芽が早まる要因となりました。しかし、3月下旬の低温により開花が早い中晩生種で結実不良が散見されました。4月上旬の開花期は朝晩の冷え込みがあったものの好天に恵まれ、結実は概ね良好となりました。5月以降は高温で推移し全品種で生育が早まり、7月以降は高温・少雨により収穫期が早まる要因となりました。そのため、小玉傾向であったものの糖度があり、高品質なナシとなりました。
整枝・せん定
花芽の着生が良好な園では、側枝の更新など次年度以降を考慮したせん定を行って下さい。花芽の着生が思わしくない場合は、短果枝中心のせん定になりがちですが、側枝の更新も意識しながら長果枝も使用して下さい。理想は、長果枝・短果枝の割合が5:5です。
1.永久樹と間伐樹の確認
永久樹・間伐樹の区別をされてある方は、枝が重なりあっていないか確認しましょう。
2.主枝・亜主枝の先端
主枝・亜主枝の先端を予備枝や側枝より強く切り返し、樹の中で一番高い位置になるようにします。棚上40~50cm、棚面から45度となるように誘引しましょう。
3.切除する枝・不要な枝
◦側枝の基部が大きい枝(3cmを超える側枝)。
◦幸水では三年以上、豊水では五年以上使用している側枝・短果枝(長果枝に更新できる場合)。
◦主枝・亜主枝の真上から出ている徒長枝。
◦主枝・亜主枝の真下から出ている側枝。
◦病害虫の被害がある側枝。
不要な枝を切除することにより、枝の重なりが少なくなることから日光が樹冠内部に取り入れやすくなります。また、切り口を作ることで新梢(一年枝)の発生を促します。ホゾを残すことも新梢の発生を促す効果があります。
4.予備枝の確保
樹勢強化と安定した側枝を目的として設置します。予備枝の長さは棚面から30~35cmになるように誘引します。細い枝ほど強めに切り返して誘引して下さい。また、予備枝の確保ができない場合は、クサビ型の切り込みを側枝基部の3cm以内に入れ、新梢の発生を促しましょう。
5.せん定後の管理
せん定後には、落葉した葉や枝の処理を行いましょう。例年問題になる黒星病等の病原菌の越冬場所となるため、園外への持ち出しや焼却を行って下さい。また、せん定後の切り口には癒合剤の塗布を行い、病原菌の侵入防止や乾燥防止に努めましょう。
施設栽培管理
1.休眠打破(自発休眠覚醒)
ナシの休眠打破には、7.2℃以下で八百時間の低温遭遇時間が必要です。ビニール被覆は低温遭遇時間が達成されてから行いましょう。低温遭遇時間の確認は、近隣の普及指導センターやJA等にお問い合わせ下さい。
2.土壌水分管理
発芽と初期成育を良くするために、ビニール被覆直前にかん水を行います。被覆後は乾燥しやすいため、5~7日間隔でかん水を行って下さい。
3.ねむり症(発芽不良)
近年問題となっているナシの「ねむり症(発芽不良)」は、低温遭遇時間の不足や暖冬による耐凍性の低下、発芽後の低温障害等の要因が絡んでいると思われます。特に施設栽培では、ビニール被覆後の急激な温度変化が大きな要因だと思われます。
4.ビニール被覆後の温度管理
被覆後の温度管理は「ねむり症(発芽不良)」対策の一つに挙げられます。昼夜の温度格差が大きいと発芽が遅れる要因となりますので夜間は低温、日中は高温に注意しましょう。ボイラーの設定温度の確認や、こまめな換気を行うなど施設内の温度管理を心がけて下さい。
管理目標
管理目標としては、永久樹の樹形確立を行いながら棚面をうめるよう側枝の配置を行いましょう。側枝が混み過ぎると日光が樹冠内部まで入りづらく、園全体が薄暗くなります。薬剤がかかりやすくするためにも側枝の配置に注意して下さい。また、次年度以降を考慮しながらせん定を行って下さい。
管理作業には十分な注意を
安全確認を行いながら作業を行いましょう。管理作業中の事故には十分に注意し怪我の無いよう作業を進めて下さい。