かき
1・2月のカキの管理作業について 《Kaju 福岡の果樹 No.560》
昨年の生育概況
着蕾は、「松本早生富有」・「富有」・「早秋」では多く、「西村早生」・「太秋」で雌花が少なく、雄花が多い状況でした。満開日は、各品種とも平年より早い傾向にあり、「富有」では5月14日前後でした。開花期は、天候に恵まれたため、受粉条件が良く、含核数は平年より多い状況でした。果実肥大については、夏期の高温により生育が鈍り、昨年よりも小玉となりました。
病害虫では、9月下旬の長雨により、炭そ病の発生が目立ちました。フジコナカイガラムシは、園地によっては発生が見られたものの、全体的には少発傾向でした。
今年のせん定作業のポイント
昨年は炭そ病の発生が目立ったため、枝にも多くの炭そ病の病斑が残っていると考えられます。炭そ病菌は、病斑の入っている枝で越冬し、翌年の感染源となります。そのため、昨年度に炭そ病の発生が多かった園は、今年も炭そ病の発生が多くなることが予想されます。よって、炭そ病の病斑の入っている枝をせん定時に発見し、取り除いていくことが、今年の炭そ病の発生を少なくすることに繋がります。また、炭そ病は伸長中の枝(緑色の枝)に入りやすいため、徒長枝や二次伸長をした枝に感染が多いのが特徴です。これらの枝を少なくするため、樹勢が強くならないようなせん定が重要です。園地によっては、樹同士が密集し、枝を広げられずにせん定が強くなり、樹勢が強くなってしまっている事例も多く見受けられます。このような園では、縮間伐が必要になってきます。
せん定の順序
1.縮伐・間伐
せん定をするにあたっては、まず園全体を見渡し、どのような状況になっているのか確認する必要があります。スピードスプレーヤ(SS)の通り道は確保されているか、樹が密集しすぎていないか等です。必要に応じて縮伐・間伐をしていきます。
2.粗せん定
樹全体を見て、主枝や亜主枝の配置を確認します。大きくなりすぎた側枝や、主枝や亜主枝の真上から出た徒長枝など、明らかに不要な枝を除去します。主枝や亜主枝の先が枝分かれし、先端がわからなくなっている場合は、どの枝を先端にするかを決めます。この場合の先端の決定基準は、枝の位置が高くなりすぎないことや、枝が垂れていないこと、結果母枝が充実していることなどです。
3.整枝・せん定
枝の先端から基部に向かってせん定を進めていきます。樹勢の強い樹はせん定を弱く、樹勢の弱い樹はせん定を強くしていきます。 樹勢の強弱は、徒長枝の発生状況や、昨年の果実の肥大状況などから判断します。また、縮伐で太い枝を抜いた樹や、粗せん定で大きな枝を外した樹は、せん定を弱くすることを考慮します。
樹高は、結果母枝から枝が伸びた高さを考慮し、収穫時に脚立に上り果実に手が届く高さにします(3・5mが目安です)。
側枝は、1年生から5年生までの枝をバランス良く配置します。側枝の間隔は、40cmから60cm程度になるように配置します。残す側枝は、果実が肥大しても垂れにくい斜め上向きの枝を残すことを心掛けます。垂れた枝は、果実が肥大しにくく、小玉ばかりになります。また、樹の基部に向かって側枝を配置する返し枝をいかに利用するかというのが、収量の増加には必要です。誘引用の紐などを用いて、返し枝を作るようにしましょう。
結果母枝は、それぞれ30cm程度の間隔を空けます。枝の充実や病気の有無、枝の向き等を考慮しながら、良い結果母枝を残していきます。結果母枝が込み合った場合は、農薬の付着率が悪くなり、病気や害虫の温床となります。また、日照不足により、翌年の結果母枝の充実が悪くなります。
品種毎のせん定のポイント
富有
果実肥大のためには、早期の摘蕾が重要です。摘蕾の省力化のためには、長大な結果母枝において、先端の数芽を切る先刈りが有効です。どの程度切るかは、花芽の状況を確認して決定して下さい。
松本早生富有
富有に比べ結果母枝の花芽が少ないので、充実した結果母枝を残すようにして、先刈りは控えて下さい。
西村早生
先端の結果母枝に花芽が多く入るため、先追いせん定になりがちです。毎年安定して収穫できるように、側枝の更新を心掛けて下さい。
早秋
早秋は着蕾数が多く、摘蕾作業が大変になります。摘蕾作業の省力化のため、長大な結果母枝は強めの先刈りを、短めの結果母枝では軽い先刈りを行って下さい。
太秋
太秋は強い結果母枝には雌花が入り、弱い結果母枝には雄花が入ります。混みあった大きな側枝は、ホゾを1cm程度残して切ります。大きな切り口を作ることで、強い結果母枝を出させるようにします。
秋王
秋王は、生理落果が多い傾向があります。横向きの結果母枝ほど結実が良いため、そのような枝を残すように心掛けて下さい。
施肥について
軟果の発生の原因の一つに、カルシウム不足が考えられます。土壌pHの低い園では、苦土石灰などの土壌改良資材を施用して下さい。土壌改良資材は、元肥施用の2~3週間前には施用を終わらせておくようにして下さい。