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もも

1・2月のモモの管理作業について 《Kaju 福岡の果樹 No.560 》

昨年のハウスモモ栽培は、暖冬の影響で自発休眠の完了時期は過去十ヵ年で最も遅く、ビニル被覆時期を遅らせざるをえませんでした。その後、開花期に高温に遭遇した作型では、結実不足を招き、その後生理落果が懸念されたため、摘果作業も遅らせざるをえませんでした。この結果、初期肥大が抑制され、糖度は高かったものの、着果不足と小玉化で収量の減少を招きました。 一方、露地栽培においては、これまで経験したことのないような夏場の高温やゲリラ豪雨等の影響で、果肉褐変症等による生理障害が多くなり、果肉先熟で収穫適期の把握が困難でした。モモの重要病害せん孔細菌病が猛威を振い、昨年の大きな減収要因となったことは記憶に新しい出来事です。 気象変動が著しい近年においては、常に気象予報に留意しながら、こまめな栽培管理をこころがけることが大切です。

ハウスモモ栽培

ビニル被覆前の準備

ビニル被覆前にせん孔細菌病等の越冬病害虫の防除を行います。
薬剤散布にあたっては、散布ムラのないように樹の直上部や先端部を重点的に散布します。
ハウスモモ栽培のせん定作業は、ビニル被覆前までに終了しましょう。ビニル被覆後のせん定作業は、樹液の流動が始まり、枯れ込みの発生を助長する恐れがあります。

ビニル被覆時期の検討

ビニル被覆時期の目安は、休眠覚醒に必要な7.2℃以下の低温に八百時間以上の遭遇が必要です。ビニル被覆時期を早めると次のような危険性が高まるため注意が必要です。

①萌芽は早いが開花後の受精機能を喪失した異常な花が多くなる。
②受精しても初期の生理落果が多くなる。
③変形果(頂部突出、片肉肥大・核割れ等)の発生が多くなる。

ビニル被覆にあたっては、前年の落葉状況や休眠覚醒に特に有効な温度(DVI休眠覚醒指数)等も考慮します。近年は気象変動が著しく、地域で被覆開始が可能な時期は大きく異なってきますので、地元JAや普及指導センター等と相談しながら被覆時期を決定して下さい。

ビニル被覆後の管理

ビニル被覆直後~3日間はサイドを開放したままで、4日後頃からサイドビニルを張ります。「ならし期間」は7日程度とします。このため、ビニル被覆直後の加温は行わないようにして下さい。

ビニル被覆直後は、樹体の乾燥防止と低温障害防止、休眠打破等のための散水を行い、乾燥している樹体に水分を十分供給します。

その後、開花期までは2~3日おきに10ミリ程度の散水を定期的に行います。ビニル被覆後は、高温乾燥状態になりやすく、湿度が低下すると萌芽の不揃いを招きます。少量多かん水を実践して下さい。

温度管理

モモのハウス栽培では、温度管理は最も重要な管理作業となります。天候に応じた、こまめな温度管理が求められます。日中と夜間のハウス内の温度差が大きくならないように天窓換気や谷換気を中心にサイドを併用して管理して下さい。また、新調したビニルを使用した場合は、ハウス内温度は特に高まりやすくなります。このため、好天の日は十分気をつけて下さい。

ビニル被覆後から開花期までの生育時期毎の温度管理は以下のとおりです。

①催芽期

ビニル被覆後の初期の温度設定は5℃程度とします。その後、3~4日おきに1℃ずつ昇温していきます。このため、催芽期の加温機の設定温度は、5~8℃を目安に管理します。日中のハウス内温度は極力高くならないようにして下さい。上限20℃以下とします。

②萌芽期

花芽の外皮が割れ始めたら、加温機の設定を8~10℃まで昇温していきます。日中のハウス内温度は上限22℃までとします。

③開花始め~落花期

開花確認後、加温機の設定を11~13℃に昇温します。日中のハウス内温度は22~3℃までとします。この時期は特に高温により花器に異常をきたす場合があります。開花期間中、ハウス内温度が30℃以上になると着果率が著しく低下したり、果頂部が突出する変形果の発生が多くなるので、満開14日後頃までは特に注意が必要です。また、ビニル被覆後から満開までの日数は、花器充実のため、35~40日間は確保できるよう生育が前進化し過ぎないように温度管理して下さい。

湿度・水分管理

ビニル被覆後は、先ほど述べたように少量多かん水を実施して、ハウス内の湿度は70~80%と高めに管理します。その後、花が咲き始めるとハウス内の湿度は50~60%まで下げるように管理します。開花期間中、ハウス内が過乾燥になると結実不良を招きやすくなるので適時かん水を行って下さい。一方、ハウス内が多湿になると灰色カビ病の発生を助長します。曇天が続くようでしたら、サイドビニルを少し開けて通風を確保したり、ビニルマルチによる地表面からの水分蒸散の防止に努めて下さい。ビニルマルチは、園内に全面被覆すると過乾燥になる場合があるので部分被覆に留めるようにします。

摘蕾

摘蕾は、花器の充実促進、果実の肥大、品質向上に効果が高く、モモ栽培において最も重要な管理作業の一つです。しかしながら、ハウスモモ栽培では、近年、その年の天候に結実が大きく左右されがちです。このため、露地栽培では、全着蕾数の50%程度を摘蕾しますが、ハウスモモ栽培では、長果枝の上向きのみを摘蕾して、全体の二割程度に留めるようにします。摘蕾の時期は、花蕾が膨らみ始め、その先端に赤みが見えだした時期が適期です。時期が遅くなると作業効率が低下し、葉芽を傷めやすくなります。摘蕾は、丁寧さよりもスピード重視で迅速な管理作業を心がけます。

人工授粉

モモは自家結実性のため、川中島白桃等の花粉が無い品種以外は、人工授粉の作業は基本不要です。しかしながら、ハウスモモ栽培では、結実確保のため、必ず人工授粉を行いましょう。

人工授粉は梵天等で開花五分咲き、八分咲きの時期に実施します。その年の気象等の影響で開花が不揃いな場合は、交配作業の回数を増やして結実確保を徹底しましょう。

ミツバチによる交配を行う場合は、開花始めに10aあたり巣箱一箱を設置します。ただし、開花期間中、外気温が低く曇天が続くようでしたらミツバチは活発に動き回らなくなります。このため、ミツバチは人工授粉と併用するようにして下さい。

露地栽培

整枝せん定

モモの樹は陰芽の発生が少なく、樹齢が進むにつれて結果部位が上昇していき、側枝をまんべんなく配置することが難しくなります。このため、樹齢や樹勢に応じて、切り返しせん定や間引きせん定を行います。また、冬季のせん定のみでモモの樹を管理した場合、強せん定になりがちとなります。夏場の枝抜き、秋季のせん定と組み合わせて行うことが重要です。

①主枝・亜主枝の骨格枝以外の不要な大枝、長大化した側枝は優先して切除しますが、モモの樹は太枝の切り口の癒合が悪く枯れ込みの原因になります。このため、このような太枝は秋季のせん定で切除します。

②モモは基部優勢が強いため、主枝の先端が弱くなりがちです。主枝の先端が弱くなると樹形が乱れ、高品質なモモの生産が難しくなります。添竹や支柱等を用いて必ず主枝の先端は真っ直ぐ上向きになるようにします。

③不要な徒長枝は、樹形が乱れる原因になるので切除します。一方、産地では樹勢低下を招いている老木樹も多くなってきています。このような園地では、徒長枝も積極的に用いて樹勢の維持に努めます。

④側枝は若返りを図るため適宜更新します。樹勢が弱い場合は長中果枝を多めに配置します。また、骨格枝の日焼け防止のため、主枝・亜主枝の背面上等から発生している弱い結果枝等は数本残すようにします。

排水対策

モモは、耐干性は強いが耐水性が弱いため、排水不良は品質低下、樹勢低下を招きます。高品質なモモを持続的に生産するためには、排水対策が重要です。比較的作業に余裕ができる冬場に行っておきましょう。盛り土や園の周囲に溝を掘ると高い効果が期待できます。

せん孔細菌病対策

昨年は、せん孔細菌病が多く発生し、露地のみならずハウスでも大きな被害をもたらしています。当病害に対する効果的な薬剤は数少なく、生育期間中の薬剤散布のみでせん孔細菌病の発生を抑えることは困難です。このため、生育期間中、罹病枝の除去を徹底するとともに、収穫後の秋季防除(落葉期2~3回)を徹底することが必要です。また、風当たりの強い園地で特に発生が多いことから、防風ネットや防風樹等の防風対策も重要です。

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